閉店の危機も!あの人気店が愛される店に成長するまでの裏側 クロッチョカフェ店長・飯森由美さんインタビュー【ちょうし人002-1】

江戸しおり / 2018.05.16

銚子のおしゃれカフェといえば、必ず名前が挙がる「curocchocafe(クロッチョカフェ)」。銚子の女性なら一度は行ったことがあると言っても過言ではない、人気のベーグル専門店です。

今回は、長年に渡って人気店を支える、店長の飯森由美さんにお話を伺いました。

飯森由美さん(41)
銚子生まれ銚子育ち
高校卒業後は看護師として数年働き、その後飲食業に携わるように。
2004年、夫とともにクロッチョカフェをオープン。
人気店を支える顔であり、バリスタとして数々の大会にも出場している。



赤、白、青。まるでフランス国旗のようなポップなカラーの外観が目印のクロッチョカフェ。2日間に渡って取材に協力していただきましたが、1日目はランチ時で満席。2日目は15時頃に伺いましたがお客さんが途絶える気配はなく、外からでもその賑わいが感じられました。

扉を開けると、由美さんとスタッフの堀井聖子さんが笑顔で出迎えてくれます。

看護師から人気カフェの顔に

ちょうしフラット通信編集部(以下、編):経歴を教えてください。

飯森由美さん(以下、由美さん):銚子生まれ銚子育ちです。銚子西高の看護科、小見川の看護専門学校を経て、卒業後は地域医療に携わりたいという気持ちから、銚子市内の個人病院で5年間働きました。

編:看護師さんだったんですね!そこからどうして飲食業界に?

由美さん:結婚したこともあり、不規則でハードな看護師の仕事を辞めることにしました。その後は、父がオランダ屋(菓子店)のオーナーであり、私自身、小さい頃からお菓子作りに興味があったため、4年ほどオランダ屋に勤務していました。

当時はそのまま子供を産んで主婦になるつもりでした。ところが、自宅でもお菓子を作ったり、ポップを書いたり、夫の前で仕事しているうちに、夫が「自分もやりたい!」とお菓子作りを始めたんです。もともと食べることが好きな人だったので、どんどんハマっていって、通信講座でパン作りを習ったり、私が朝起きると台所でパンを作っていたりするようになりました。
その頃、銚子にはカフェがあまりなかったので、私たちは休みのたびに市外にお茶をしに行っていたんですが、26歳のとき、夫に「カフェをやりたい」と言われました。

編:カフェを始めたいと言い出したのは旦那さんだったんですね。由美さんはすぐに賛成したんですか?

由美さん:最初は「無理だよ」と言いました。父の背中を見て、商売の大変さはわかっていましたし、ましてや未経験なので、1年くらいは反対していました。
そんな私の反対をよそに、夫は、お金はいらないからと言って、仕事に行く前に数時間パン屋さんで修行する生活を始めました。
その努力を見るうちに、私の意見も少しずつ変わっていって、
「オリジナルのもの、これなら他には負けないというものを作れないと、やっていくのは難しいよ」
「じゃあ何をつくる?」
となってたどり着いたのがベーグルでした。

当時はベーグルが流行っていて、女性誌にもしきりに取り上げられていました。でも、いざ食べてみると、ヘルシーでモデルさんにも人気と言われている割には、あまり美味しくないという印象だったんですよね。
そこで、自分たちが美味しいと思うベーグルを作ることにしました。
それからの夫は、仕事をしながら毎日ベーグル作りをし、1年ほどかけてやっと今のレシピにたどり着きました。その頃は、私が朝起きるといつも台所にいて、仕事から帰ってくると、袋いっぱいのベーグルを差し出して、「どっちがいい?」って。どれがいいのかわからなくなるくらいの量のベーグルがありましたね。

そして、28歳のとき、2004年4月1日にクロッチョカフェをオープンしました。


▲ショーケースには、2人の努力の結晶であるベーグルサンドがずらり

閉店の危機を救った親友の存在


編:当時からお店の体制は変わっていないのですか?

由美さん:大きく変わりました。当初、オーナーである夫は、ベーグル作りもお菓子作りもバリスタも接客も全てをこなしていました。私は彼のサポート役で、聖子さんがお店にいる時間も今ほど長くありませんでした。
当然、彼の負担はかなり大きく、体調を崩してしまい、あんなにカフェをやりたいと言っていた夫が「お店をやめたい」と言い出したんです。

カフェ巡りが好きで、自分たちが求めるカフェを作りたいという理想と、いざやる側になって、ストイックに最高の接客をしようとしたり、お客様の口に入るものを作ったりする、プレッシャーばかりの現実。やりがいもありましたが、慣れていなかったこともあり、大変さのほうが大きかったんですよね。

そんなとき、お店をやめるかもしれないと知った学生時代の親友が、わざわざお店まで足を運んでくれました。そして驚くべきことに、「こんなに愛されているお店をやめるのはもったいない。私が仕事を辞めて、貴女がやる気になるまで手伝うから、オーナーを休ませてあげて。」と言ったんです。
当時彼女は、柏市の癌センターで看護師としてバリバリ働いていました。そんな彼女が、私たちのためにそこまで言ってくれたんです。

しかし、その時の私はコーヒーも淹れたことがなく、夫が元気になるまでの穴埋めなんて、とてもじゃないけどできないと思っていました。それでも彼女は、「私の気持ちは決まっているから、あとは貴女の気持ち一つ。やりたいの?やりたくないの?どっちかしかないでしょ。」と。
そこで、私の口から出たのは「やりたい」と言う言葉でした。

彼女に「やりたいの?やりたくないの?」と聞かれたとき、頭の中にはお客様の顔が次々に浮かんできました。開店して間もないクロッチョカフェを応援し、温かく見守ってくれているお客様がたくさんいました。「やりたい」と私に言わせてくれたのは、ほかでもないお客様だったんです。

編:そんな危機があったんですね。それにしても、そこまで言ってくれる親友がいるのは素晴らしいですね。

由美さん:私(由美さん)の存在に助けられて、今の看護師としての自分がいる。そんな大事な友達が大変なときなんだから、必要としてくれるなら手伝いたい、力になれたら嬉しいと思ってくれていたようです。

夫の穴を埋められるのか、それだけが不安でしたが、「やりたい」と口にしたら急に強くなって、精一杯やろうという気持ちになりました。

編:旦那さんも喜んでくれましたか?

由美さん:夫に親友のことを伝えると、最初は怒られました。毎日お店に立って切り盛りすること、いい空間作りをすること、美味しいものを作ること。それらを日々やり続けることの大変さを痛いほどわかっている夫なので、心配だったんだと思います。
それでも、今はやめられないという気持ちが強かったので、夫にサポートしてもらいながらお店に立ちました。

お客様には、「マスターは?」ってよく聞かれましたが「女子がいた方がいいでしょ」なんてかわしながら、親友と2人でお店に立ちました。そうして、夫は表に立つことがなくなりましたが、今でもお菓子は全て夫が作っています。

お店の危機はバリスタ人生スタートのきっかけに




夫に店をバトンタッチされてからは、コーヒーも淹れたことがない私が、バリスタの勉強を始めました。当時は休みのたびに東京に勉強に行っていましたね。

編:大変な生活だったんではないでしょうか?

由美さん:クロッチョカフェは、夫が作ってくれて、彼も本当は閉店なんてさせたくなかったし、親友が仕事を辞めてまで守ってくれたお店です。何より、「やめたくない」と自分が口にした大事なお店です。
その気持ちを貫くためには、お客様のニーズに答えられる仕事をしなくてはいけない。そのためには、技術も、人間としても成長しなければなりません。お店のお手洗いに、クロッチョカフェを作った時のコンセプトが貼ってあるんですが、この思いを貫くために、「やる=(イコール)」で考えたら、勉強するしかありませんでした。


▲カフェとは…
「〇〇がしたくなったらカフェに行けばいい」がずらり。人と人を繋いで行ける場所でありたいと思うクロッチョカフェの開店当初からのコンセプトが書かれています。

編:具体的にどのような勉強をしたんですか?

由美さん:当時はラテアートが今ほどメジャーではなかったので、おもてなしで他と差をつけるために、コーヒーとラテアートの勉強を始めました。
私がラテアートで大事にしていることは、目の前のお客様に喜んでもらうことです。例えばお子さんならうさぎとか、動物のラテアートをしてみたり。そのためには、日々の練習が不可欠なので、技術向上の一つの目標にするために、大会にも出場しています。
去年はストリーマーコーヒー(東京)ラテアート大会4位、去年と今年は世界ラテアート大会ベスト32に残りました。

大会は技術面で凝ったものを作る必要があるので、大会出場にこだわり過ぎるのはよくないと思っていますが、やり始めてみると、嬉しい発見がありました。
お店に活気が出たり、お客様が応援してくれたり、コーヒーに興味を持ってくれたり、大会で出会ったバリスタが地方から遊びに来てくれたりしたんです。



編:大会の結果以上の結果が得られたんですね。

由美さん:何か一つのことに一生懸命取り組むと、こんなにいい流れができるんだと感じました。インスタに大会の報告をアップすると、
「同じ女性として、一つのことに夢中で取り組む姿に元気をもらいました」
「寝る間も惜しんで練習してる姿に、自分も頑張ろうと思いました」
といったコメントをたくさんもらえました。それがまた私の励みになったし、チャレンジすることで得たこのような繋がりは大きな財産だと思っています。
今は結果にはこだわっていなくて、自分がやりたいと思うことを大切に一生懸命やっていこうと思っています。

編:由美さん、いつも本当にキラキラしていますよね。頑張っている姿が美しいなって思います。

由美さん:そんな、全然!(笑)でも、いつもお店のことを考えているかな。ラテアートはどんなデザインがいいかな、あのお客様が来たらこれを描こうかな、とか。
引き出しがないと表現ができないものなので、どんなものも無駄ではない、と以前よりも視野を広くして日々過ごすようになりました。

インスタも最初は大変でしたが、今は歩いていて目についた廃材すらも、こんな写真に使えるかも、なんて考えながら拾っちゃうんです。
苦手なことでもやり続けると徐々に自分の力になって、それに気づいてくれるお客様がいて、そこでまたコミュニケーションにつながっていって。そんな積み重ねを大切に、毎日を過ごしています。

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「ハードな毎日こそが自然体になればいい」由美さんの1日


編:今もハードな生活をしていらっしゃると思います。由美さんの1日のスケジュールはどのような感じなんですか?

由美さん:朝は3時起きです。毎日夫が何かしら新作を作るので、その日にお店に出す新作の名前や値段、オーナーのこだわり、提供の仕方の説明を聞きながら、朝食で試食します。
3時半から家事をしたり支度をしたりして、4時半には家を出ます。
お店に入ったら4:45にはミキサーを回し始めて、5時には生地がこね上がるので、9時半まではひたすらベーグルを作っています。焼いてはサンドしての繰り返しで、1日に150〜200個くらい作りますね。
ベーグル作りに並行して、プライスを書いたりエスプレッソマシンの準備をしたり、インスタに投稿したり。

編:3時から動いているんですね。忙しい!!

由美さん:朝ごはんが早いので、9時頃にはお腹が空いてしまいますね。ベーグルは、毎日同じレシピで作っていても、気温が違えば仕込みの温度も焼き上がりも変わるので、チェックとお昼ご飯を兼ねて食べています。

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編:オープンしたらお客さんはひっきりなしで、本当に休む間がないですね。

由美さん:お客様とお話しながら楽しくやっていますが、フード、サンドイッチ、ドリンクと、次から次へと作っています。
18時に閉店した後、掃除や後片付けをして、だいたい19時半には店を出ます。夕飯は夫が作ってくれるのですが、ベーグル新作や翌日のランチの試食もしていますね。

編:家に帰ってもまだまだお仕事は終わらないんですね。

由美さん:お店に出ていると、いっぱいいっぱいになってしまうので、夫に話すことで、その日の仕事を客観的に評価することができています。その都度学びと反省がたくさんあるので、翌日聖子さんに伝えて、接客、店づくりに活かしています。
マニュアルがあるようでない仕事なので、経験あるのみなんですよね。

編:どうしてクロッチョカフェは居心地がいいのか、わかった気がします。そこまでストイックにやられていると、睡眠時間もあまり取れませんよね?それを長年続けているって、本当にすごいことだと思います。

由美さん:毎日4時間くらいしか寝ていませんが、仕事の日はこのくらいのリズムがちょうどいいと思えるくらいには慣れました。お休みの日は二度寝しちゃいますが(笑)
仕事している時が一番疲れないって言えるくらい自然体になれたらいいんですが、今はまだ腕を磨いている最中なので、どうしても緊張しちゃいますね。
長くやっているお店って、お客さんが自然とその店に合わせている感じがしませんか?
私がここに立っていることが日常になって、その風景にお客様が癒され、私もお客様も自然体でいられるお店にしたいです。

進化を続けるクロッチョカフェ


編:どんな瞬間に喜びを感じますか?

由美さん:やっぱり、美味しかった、来てよかったと言っていただけた時でしょうか。私も聖子さんも、お客様には帰り際に必ず一声かけるようにしています。そうすると、「誰々さんの紹介できましたとか、どこから来ましたとか、コミュニケーションが生まれるんですよね。
そういった会話の中で、わざわざクロッチョカフェを選んで来てくれたことがわかると本当に嬉しいです。
美味しいお店ってたくさんあるじゃないですか。それでも、私にコーヒーを淹れてほしい、クロッチョカフェじゃないと、って価値を感じて来てくれると、なんてありがたいんだと思いますね。


▲笑顔が素敵な由美さん(右)とスタッフの聖子さん(左)

編:市内外問わず多くのファンがいるクロッチョカフェですが、もっとお店をこうしていきたいという思いはありますか?

由美さん:クロッチョカフェは、よくも悪くも銚子らしさが何もないんです。それがいいと言われる嬉しさもあるのですが、ここまで地域に受け入れていただいているので、これからは恩返しの時期だと思っています。今後は、銚子の食材を使ったサンドを作るなど、もっと銚子らしさを出していくかもしれません。

編:クロッチョカフェが表現する銚子らしさ。とても楽しみです!

由美さん:それから、実はオーナーがもう1つお店をやりたいと言っているんです。だから、オーナーが抜けても、自分だけでも形にしていけるように、より頑張っていきたいと思っています。

(聞き手・佐野明子 / 文・江戸しおり)

由美さんがクロッチョカフェのおすすめメニューを解説してくれました!

curoccho cafe
〒288-0041 千葉県銚子市中央町13-6
0479-23-7096
11:00~18:00(food L.O17:00/drink L.O 17:45)
水、木曜日定休

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