震災を乗り越えて今がある。銚子観光の目玉「イルカウオッチング」を小さな体で支える女性に迫る〜大富奈穂子さんインタビュー〜

美味しい魚!大きな灯台!屏風ヶ浦の絶景に広大な太平洋!銚子の魅力は、海とともに語られることが多いですが、そんな銚子の海で、他の地域ではなかなかできない貴重な体験ができることを知っていますか?

実は銚子近海では、イルカやクジラを見ることができるんです!
そこで、銚子の見どころの一つである「イルカウオッチング」などを行う、有限会社 銚子海洋研究所に行って来ました。

今回は、所長の妻であり、専務取締役として海洋研究所を取り仕切る大富奈穂子さんにインタビューを敢行。
銚子の環境やイルカに魅せられて銚子に移住してしまった大富さんに、銚子の魅力やイルカウオッチングの見どころから、他ではなかなか聞けないプライベートなお話までたっぷり伺いました。

大富奈穂子さん(32)
大阪生まれ大阪育ち動物関係の専門学生時代に研修で銚子海洋研究所に来たことが、銚子とのご縁のはじまり。
海洋研究所所長の宮内幸雄さんを公私ともに支えるパワフルウーマン。

運命的な銚子とのつながり

ちょうしフラット通信編集部(以下:編):大富さんの銚子との出会いを教えてください。
大富さん:高校卒業後に通っていた、神戸の動物系の専門学校での研修で銚子海洋研究所に来たことがきっかけです。その時は、2週間ここで実習をしました。

編:どうして銚子海洋研究所に研修に来たんですか?
大富さん:2年間の専門学生生活の中で、いろいろな場所に研修に行った中の一つでした。
私は小さい頃からイルカが好きで。和歌山にアドベンチャーワールドという動物や自然と触れ合えるテーマパークがあるのですが、小学生のときにそこで初めてシャチのショーを見ました。シャチと人間が一緒にジャンプする光景を目にして、私も一緒に泳ぎたい!と思い、高校生の頃まではシャチやイルカトレーナーになりたいと思っていたんです。そのころはイルカウオッチングのガイドがあることなんて知らなかったので、やるならトレーナーだと思っていました。

編:研修中はどのような経験をしましたか?
大富さん:研修に来たのが10月頃で台風が来ていて、2回しか海に出られなかったんです(笑)
でも、クジラがメインの時期のたった2回のウオッチングで、スナメリ(イルカ)を見ることができました。距離がとっても近くて、「こんなところでイルカが見られるんだ!」ととても感動しました。そこから、ゆくゆくは海関係の仕事ができたらいいなという気持ちになっていきました。

編:そのまま就職…とはならなかったのでしょうか?
大富さん:実は銚子海洋研究所に来たのは2年の終わりで、すでに就職先が決まっていたんです。就職先はマレーシアのボルネオ島でリバークルーズを行う会社でした。ジャングルの中で川を下りながら野生動物ウオッチングをするんです。

編:大富さんもボルネオに行っていたんですか?
大富さん:夏は長い時だと2ヶ月間ボルネオに行きっぱなしということもありましたね。1年間勤めて20回ほどボルネオに行きました。イルカも好きでしたが、ジャングルでは野生のゾウが見られたりするんです。すごく楽しかったですね。

編:野生のゾウ!それは見てみたいです!でも、そこからどうして銚子海洋研究所へ?
大富さん:ボルネオの仕事はすごく好きでした。でも、就職してから1年ほど経つという時に、銚子海洋研究所のホームページでボランティアスタッフの募集を見て、思い切って仕事を辞めて銚子に行くことにしました。親にも事後報告でしたね(笑)

編:ホームページを見ていたということは、やっぱりずっと気になっていたんですか?
大富さん:悩むこともいろいろあって、他にはどんな仕事があるのかなといろいろ見ていたんです。研修でお世話になったり、海関係の仕事が気になったりしていたので、銚子海洋研究所のホームページも見ていました。きっとそういうタイミングだったんですよね。

編:運命的ですね。それからずっと銚子にいるんですよね?
大富さん:社会人2年目の春に銚子にきました。衣食住保証のボランティアスタッフではありましたが、お給料がもらえるわけではないので、当初は2〜3年で別のところに行く予定でした。ところが、3年目に、10年くらい働いていたベテランスタッフが辞めてしまったんです。「あとはよろしくね!」って任される感じになってしまって、辞めるに辞められなくなってしまい……。その時に、正社員登用のお話をいただいて、「それならとりあえずやってみるか」と、正社員としてもうしばらく働くことにしました。

編:離れられない運命だったんじゃないですか?(笑)ボランティアと正社員では仕事内容も変わりましたか?
大富さん:もう大変です!ボランティアの時は船に乗ったりガイドをしたり、好きな仕事ばかりやっていましたが、正社員になってからは打ち合わせや経理もこなさないといけなくなったので。ボルネオでも同じようなことをしていましたが、日本人を相手にするよりもだいぶゆるかったので、初めての経験が多かったです。それ以外に、新しいスタッフの教育やフォローも必要になったので、本当に大変でした。
それでも、船に乗ったりくじら見たり、何より喜んでくれるお客様の顔を見ると、「頑張るか!」と思えました。

編:結婚して二児のママになった今でもこれまでと同じくハードに仕事をこなしていると聞きますが。
大富さん:変わっていませんね。船に乗ってイルカや野生動物のガイドをして……。ハードですが、やりたいことができているので楽しいです。

一時は廃業の危機も。震災を乗り越えたから今がある

編:以前は外川にあった海洋研究所が銚子マリーナに移転してきたのは2年前でしたよね?
大富さん:そうです。私が研修に来ていたときから銚子マリーナに移転したいという想いを聞いていたので、移転したいと思ってから実現するまでは長かったと思います。まさか自分がそれに携わるとは、思ってもみませんでしたが。

編:そうですよね。移転後のお仕事環境はいかがですか?
大富さん:今までは漁港に拠点があったので、お客様を車で5分ほどかけて連れて行っていましたし、何よりロケーションが全く違いますよね。お客様も、「ここからイルカを見に行くんだ!」と最初からワクワクできると思うんです。

大富さん:私自身、スタッフとして事務所にいるだけでも気持ちがいいですね。忙しかったりいろいろあっても。朝ここに来てこの景色見ると「頑張ろう」って思えます。夕日が沈む時間帯も絶景なので、夕景を見ては「明日も頑張ろう」って思っています。

編:こんな絶景を見ながら仕事ができるなんて、素晴らしい環境ですよね。サテライトオフィスに使わせてほしいです。
大富さん:2階はレンタルスペースになっていて、打ち合わせや会議に使えるスペースになっているので、開放的な気分でお仕事していただければ!1階はお土産販売スペースと休憩所になっています。外でBBQもできるので、イルカウオッチング以外にも楽しんでもらえれば嬉しいです。

編:でも、苦労もたくさんあったのでは?
大富さん:そうですね。特に東日本大震災の時は本当に大変でした。
震災の時、私は妹の結婚式でたまたま大阪にいたのですが、地震が起きた後、一瞬だけ所長と電話が繋がった時に、「船を沖に出す」と言われたのですが、そのまま切れてしまって……。その時は何が起きているのか状況がわかりませんでしたが、テレビでは津波の様子が繰り返し報道されていて、銚子にも津波が来たことを知ったので、覚悟しないととは思いました。
所長の安否もわからない状態でしたが、洋上で一度だけメールが繋がって、生きていることだけはわかった、そんな状況でした。
所長が守ってくれたおかげで船は無事でしたが、事務所には水が入ってしまい、車もバイクも流されて銚子マリーナの拠点も無くなってしまったので、当時はもう終わりだと思いました。

編:あの時は、市内の観光施設、宿泊施設も大打撃を受けました。普段の状態に戻るまでには相当な時間がかかったのではないですか?
大富さん:3ヶ月ほど船が出せなかったのですが、どうにかGWには運行したかったので、許可を取るなど、あらゆる準備しながら再開しました。予約が普段通り戻ったのは翌年くらいだったと思います。収入も激減しましたが、全国のウオッチング関係のみなさんが応援やサポートをしてくださって、そのおかげで今の銚子海洋研究所があると思っています。

震災の困難を乗り越え、所長の宮内さんとともに銚子海洋研究所を守り抜いた大富さん。小さな体で銚子観光の目玉であるイルカウオッチングを支えるパワフルな女性であることがわかりました。

後編では大富さんの知られざるプライベートと、イルカウオッチングの見どころを紹介します。
続く→30歳差夫婦の絆が支えるイルカウオッチング!大富奈緒子さんインタビュー

(聞き手・佐野明子 / 文・江戸しおり)

イルカ・クジラウオッチング 銚子海洋研究所
〒288-0025 千葉県銚子市潮見町15-9
0479-24-8870
イルカ・クジラウオッチング 銚子海洋研究所

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