「自分を育ててくれた銚子を盛り上げたいから日本一を目指す」黒潮よさこい祭り実行委員長・鈴木智仁さん【黒潮よさこい祭り開催直前インタビュー①】

今年で16回目を迎える、秋の銚子の人気イベントのひとつ『黒潮よさこい祭り』開催まであと少し!

ちょうしフラット通信では、銚子のYOSAKOIチーム『黒潮美遊』の団長をはじめ、メンバーのインタビュー記事を続々公開中。

今回は、黒潮よさこい祭り実行委員会 理事長であり、黒潮美遊の団長である鈴木智仁さんに、黒潮よさこい祭りや黒潮美遊立ち上げの背景、思いなどをたっぷりお伺いしてきました。

鈴木智仁さん(51)
黒潮よさこい祭り実行委員会 理事長
黒潮美遊団長
新車・中古車販売の『有限会社アルプス』代表
<今年の黒潮よさこい祭りの見どころ>
・夕方から始まる決勝戦
・YOSAKOIソーラン祭りで前人未到の4連覇を果たしたチーム『新琴似天舞龍神』(北海道)
・ドローンを使ったライブ中継(予定)

仕事も遊びも全力で。〜鈴木さんの経歴〜

銚子生まれ銚子育ちの鈴木さん。親御さんの仕事の関係で小学校4年生から東庄町(銚子市の隣)に引っ越しますが、その後銚子の高校に進学。卒業後は銚子で一人暮らしをしていました。

「その頃は向上心があって貪欲だったというか、いつまでも親元にいたんでは何も得られないって考えていて。自分の力だけで生活することがどんなことか体験しよう、って銚子でアパート住まいをしていました」

銚子に戻った理由はズバリ
「故郷で好きな街だから」。

「銚子の好きなところ、嫌いなところは?」
という質問にも
「好きしかねえ。自分のことを形成してくれた、育ててくれた街だから」
と銚子愛をにじませていました。

そして、銚子弁が似合う男らしい雰囲気に違わず、これまでの経歴も豪快そのもの。

「高校は3年の終わりに辞めてくださいって学校から言われてね(笑)3年の冬休み数日前に退学になっちゃったんだよ。それで、年があけて1/15くらいには銚子の中古車ディーラーに就職」

親御さんが板金工場を営んでいることもあり、子供の頃から車に慣れ親しんできた鈴木さん。
「漠然と、進むならその業界かな」
とメカニックを志したそうです。

働きながら休日のたびに千葉市まで通い、社会人3年目には2級自動車整備士の資格まで取得しました。

さらに、遊びにも全力だった鈴木さん。

「メカニックの見習いって給料安いの。同世代の連中と一緒になって遊ぼうとすると全然お金が足りない。それで(仕事が終わってから)夜9時から2〜3時までビリヤード場でバイト。そのころはサーフィンもやってたから、5時には起きて海に行ったりとか」

一睡もしないで2日過ごすこともざらだったそうですが、
「そのせいで仕事ができないのはあってはいけない。熱があっても仕事に行って風邪こじらせて入院しちゃったこともあったし、無茶ばっかしてた時代だね」
と、タフな武勇伝をたくさん話してくれました。

その後1992年に退職し23歳で独立。(有)アルプスの前身を立ち上げ、中古車販売を開始。
「そのころは全てにおいて駆け足だった」
という言葉通り、怒涛の20代を過ごしました。

偶然から生まれた…  〜よさこいとの出会い〜

その頃、よさこいへの興味は
「全然無い!」
と振り返る鈴木さん。

しかし、18〜9歳の頃にダンスパーティーの企画をしていたこともあり、踊りやイベント企画自体は好きだったそうです。

そんな鈴木さんがよさこいと出会ったのは35歳の頃。誘われて銚子青年会議所(JC)に入ったことがきっかけでした。

JCでは1年ごとに理事長が変わり、理事長は必ず大きな事業を1つやらないといけないという慣例があります。鈴木さんがJCに入った頃の理事長が、現在の黒潮よさこい祭り実行委員会会長の岩井剛さんだったのです。

「俺がJCに入ったのが年末。年明けから理事長が変わるんだけど、みんな理事長に任命される前から何の事業をやるか考えているわけ。でも岩井さんは任命されてから考え始めたんだって(笑)」

「それで、JCの飲み会後に酔っ払って帰ってテレビをつけたら、たまたま高知のよさこいまつりがやってた。それを見て『すごいなこれ、銚子でこれをやろう』って」

今では銚子の秋の人気イベントが偶然の産物だったことに驚きましたが、周囲からも戸惑いの反応は多かったそうです。

「『よさこい祭りをやりたい』って言った岩井さんに、みんなはポカーンって感じ。当時(2004年頃)はよさこいって何?っていう時代だった」

しかし、まずはよさこいを研究しようと、レンタルしたよさこいのビデオを見た鈴木さんはすぐさまよさこいの虜に。

「ビデオでも圧巻だった。100人前後の隊列が一糸乱れず踊っている。初めて見る光景にびっくりして感動して、これを銚子でやるなんて面白いじゃないかって」

180人もの大人数で始動 〜黒潮美遊の始まり〜

しかし、黒潮よさこい祭りの開催に賛同した鈴木さんにはある疑問が。

「銚子にチームがなくていいんですか?」

「ダメ出しのつもりで言ったら『じゃああなたがチームを作ってください』って任命されちゃったの(笑)『わかりました、やってみせます』って啖呵切ったよ」

人を集めてからチームを作ることを決めた鈴木さんは、まずよさこいの体験会を開催。初回に集まった人数はなんと180人だったそうです。

「びっくりしますよね。40〜50人集まれば万々歳と思っていたから。年齢はちびっ子からおばあちゃんまで。性別は女子の方が圧倒的に多かった」

当時千葉県にはすでに20〜30のよさこいチームがあったため、チーム運営や踊りのレクチャーをお願いし、徐々にチームが始動。メンバーから集まった15個ほどの案の中から、投票で「黒潮美遊」というチーム名が選ばれました。

そして、約120人のメンバーで第一回黒潮よさこい祭りに参加しました。

「隊列を組むと後ろの人が見えないくらい人数がいた。他のチームはそんなにいないから、みんなびっくりしてたね」

第一回黒潮よさこい祭りには20チームほどが集まり、イベント自体も大成功。毎年開催の連続事業となり、2回目以降はJCを離れて実行委員会が運営。今年で16回目の開催となります。参加チームも年々増え、今年は50チーム程度の参加が予定されています。

「やるからには最上(うえ)を目指す」〜黒潮美遊の飛躍〜

黒潮美遊は初年度に『おみがわYOSAKOIふるさとまつり』で3位に。2年目には衣装と振り付けをリニューアルして、より本格化していきます。

「その辺りから『やるからには最上(うえ)を目指す』って掲げて、やるなら大賞を取るようなチームに育て上げようと、厳しくしていって…」

キッズチームの『黒潮美遊 潮っ子組』ができたり、別チームに独立するメンバーがいたりして、黒潮美遊のメンバー数は60人程度に落ち着きます。

そして、初めて『よさこい祭りIN光が丘』(東京)に遠征し、30〜40チームが参加する中でグランプリを受賞。ますます上を目指すようになり、鈴木さんも趣味だったゴルフをやめて、完全によさこいに集中していったといいます。


▲真剣な目で練習を見守る鈴木さん

しかし、この16年の間には、苦しいことももちろんありました。

「人間関係のもつれが常にある。常に!」
と強調する鈴木さん。

中でも、長年鈴木さんの右腕だった仲間と対立してしまい、中核のメンバーが複数辞めてしまった頃は大変だったといいます。

「2010年頃はメンバーが20人切った。2人入っても3人やめるみたいな、常にマイナスの新陳代謝が起こっていて、その頃が一番辛かった」

そんな状況でパフォーマンスのスキルを保つことは大変でしたが、その頃には世間から黒潮美遊ワールドと言われるものを確立しており、大会では少人数ながら必ず上位に食い込んでいました。

そして、どうにか踏ん張っていた黒潮美遊に転機が訪れます。

「息子が友達を5〜6人引き連れて戻ってきた。そこからじわじわ今の黒潮美にまで押し上げてくれた」

小中学生の頃の数年間、潮っ子組と黒潮美遊に所属していた息子さんが、高校の部活を引退した後に戻ってきたのです。

「振付けと構成も自分がやりたい、やらせてくれって頼んできた。素質があったっていうか、今ではこの世界では全国で名前を知られるくらいの功績を残せるようになっちゃって」

息子の大心さんは、現在黒潮美遊の総合プロデューサーを務めています。YOSAKOI振付師としての活動以外にも、大手レコード会社所属歌手などの振り付けも手がけ、振付師、クリエイターとしても活躍しています。


▲指導する大心さん(手前)

「息子が戻ってきたあたり(2012年頃)から全国一を目指そうって空気が強くなってきた」
と鈴木さん。

2014年には、よさこいでは日本一の大会「YOSAKOIソーラン祭り」(北海道)に初出場。思うような結果は残せず「悔しい思い」をしたそうですが、2015年には40人以下の部門で百数十チームのうちの上位10チームに入り、決勝戦出場を果たします。さらに2018年には、40人以上の部で270チームのうちの上位20チームに入り、年々日本一に近づいています。

「20チームに入ったその時がいちばん嬉しかった。やっと(日本一が)射程距離内にきたって手応え(を感じた)」


▲黒潮美遊のメンバー募集のポスターにも「『日本一まで、あと少し』」の文字が

強くなることで地域貢献したい 〜黒潮美遊と黒潮よさこい祭りが目指すもの〜

黒潮美遊の活動理念には、青少年健全育成と地域貢献があり、鈴木さんが日本一を目指す理由もそこにあるといいます。

「もともと銚子を盛り上げたい、元気にしたい(というのが根底にあり、)よさこいは目的じゃなくて手段だ」
「黒潮よさこい祭りにきてくれる人で銚子がごった返すところまで持っていきたい。
そのために、強くてみんなから憧れられるチームが集まっているお祭りにする。
それには自分たちが強くなるのが一番効果が高い。だから日本一を目指している」
と鈴木さん。

去年からは前夜祭も開催するようになりましたが、
「ゆくゆくは2日開催にして、銚子の秋の風物詩にしたい」
と意気込みを語ってくれました。

そして最後に鈴木さんは、こう言います。

「銚子の人間だったりものだったり自然だったり、全てによって自分が形成された。そこで(黒潮よさこい祭りや黒潮美遊という)ライフワークに出会えたことが幸せ。出会えたからには最後までやりきるのが自分の使命だろうなって、ゆるぎなく思ってる」

「黒潮美遊は、衣装、作品、全部自分たちらしいもので、『こんなものもあるんだよ』って新しさを仕掛けて、日本のよさこいシーンをくすぐることができればと思ってやってます」

2019年の黒潮よさこい祭りの見どころは?

今年の黒潮よさこい祭りのテーマは「起望(きぼう)」。鈴木さんが実行委員長になった2014年からは、毎年このように造語でテーマを作っているそうです。

サブタイトルに『〜わが町の将来(みらい)をあきらめない〜』とあるように、
「(銚子の勢いが衰えているなど)『色々言われるけど、まだまだ諦めねえよ俺は』って気持ちでつけた」と鈴木さん。

そんな黒潮よさこい祭りの今年の見どころを伺うと、

・夕方から始まる決勝戦
・YOSAKOIソーラン祭りで前人未到の4連覇を果たした『新琴似天舞龍神』(北海道)
・ドローンを使ったライブ中継(予定)

の3つを挙げてくれました。

前例のないドローンを使ったライブ中継を行う案があり、実現すれば日本初になるそう!

また、よさこい界で知らない人はいない『新琴似天舞龍神』というチームが北海道から参加するほか、約50チームが集まる豪華なお祭りとなる予定です。

今年の黒潮よさこい祭りは11月24日(日)開催!詳しくはこちら→11月24日開催!第16回 黒潮よさこい祭り

(写真提供・千代田 真依さん/聞き手・佐野明子,地下玲菜/撮影・青柳愛/文・江戸しおり)

ちょうしフラット通信では、黒潮美遊メンバーのインタビュー記事も続々公開中!
今年の黒潮よさこい祭りの見どころやそれぞれの思いをお伺いしました。

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