お客様の生の声を商品開発に生かす。「ヤマサ醤油」の新たな挑戦〜冨成浩静さんインタビュー〜

言わずと知れた魚の街・銚子。食卓には新鮮なお刺身が並ぶことも多く、その傍らにあるのはいつだって美味しくて新鮮なお醤油です。

実は銚子は醤油の街でもあります。市内には、醤油の全国シェアトップ5に入るヤマサ醤油(1645年創業)とヒゲタ醤油(1616年創業)の2社があり、銚子市内の飲食店では、ヤマサとヒゲタの2種類の醤油が置いてあることも珍しくはありません。銚子の人は、好みや気分、用途によって、ヤマサとヒゲタの醤油を使い分けるのが小さい頃からの習慣なんです。

今回は、そんな醤油の街・銚子を支えるヤマサ醤油株式会社で、「美味しいものを届けたい」「新たなモノづくりのツールとしてヤマサ醤油を使いたい」と日々奮闘している男性に出会いました。

冨成浩静さん(37)
愛知県岡崎市出身高校までを岡崎市で過ごし、大学時代を北海道で過ごす。
2004年ヤマサ醤油株式会社入社。開発、技術営業職を経て再び開発職に配属され、売店に立ちながら新商品の企画・開発に携わってきた。

銚子の新名物!?ぬれ煎餅焼きそば

2016年春、ヤマサ醤油の工場に新しくできた「しょうゆ味わい体験館」。ヤマサ醤油の歴史的資料や昔のしょうゆ造りに使用した道具の展示などが行われており、銚子の醤油造りの歴史を楽しく学ぶことができるスポットです。


▲昔の醤油づくりの道具

▲昭和23(1948)年までヤマサの工場内で使用されていた蒸気ポンプ消防車

その一角には、おなじみのヤマサ商品や、ここでしか買えない限定アイテムが販売されている売店があります。

売店で最近話題の商品が、「銚子ぬれ煎餅やきそば」!

ぬれ煎餅とは、醤油がしっかりとしみ込んだ柔らかいおせんべいのこと。地元の方からはもちろん、県外の方からも長年愛されてきた銚子名物です。


▲これがぬれ煎餅(銚子電鉄ぬれ煎餅)。

「赤の濃口味」、「青のうす口味」、「緑の甘口味」があり、もちろん使われている「ぬれ煎餅専用醤油だれ」はヤマサのもの。
「銚子ぬれ煎餅やきそば」と言うのだから、どこかにぬれ煎餅が入っているはずですが、一体どこに!?

焼きそばが茶色いのでわかりづらいですが、調理しているところを見せていただいたところ、しっかりぬれ煎餅が入っていました。
実際にいただいてみると、ぬれ煎餅のあまじょっぱさがしっかりアクセントになっている感じ。ぬれ煎餅独特の柔らかさも時々感じられて、食感がまるでお肉みたいなんです!
このぬれ煎餅焼きそばの生みの親が、ヤマサ醤油株式会社営業本部 特販営業部の冨成浩静さん。

冨成さんは大学卒業後、新卒でヤマサ醤油に就職し、開発職、技術営業職を経て2008年4月に再び開発職に配属され、さまざまな商品の開発、企画に携わってきました。

ぬれ煎餅焼きそばを通して新たなモノづくりを伝えたい

「ぬれ煎餅焼きそばはヒット商品ですよね?」と問うと、「まだまだですよ」と笑う冨成さん。2016年のGWに販売が開始されたぬれ煎餅焼きそばは「新たなモノづくり」をするための一つの手段だったそうです。
東京で2年間技術営業職の経験を積み、2008年に銚子の地で開発職に再び携わることになった冨成さん。ヤマサの醤油やつゆたれは、銚子だけではなく全国で「醤油の定番」「信頼度の高いメーカーの製品」だと評価されています。

しかし、さすがは昆布つゆや鮮度の一滴など、業界に先駆けて新しいモノを生み出してきたヤマサ醤油。開発の現場は常に「新しいことをどんどんやらなきゃ!作らなきゃ!」という使命に燃えているそうです。
また、製品を作って売るだけではなく、どのように消費者に伝えるかを考える必要もある仕事なのだとか。

では、何をすべきなのか。
冨成さんが出したあらゆるアイデアの中の一つがぬれ煎餅焼きそばでした。

「銚子のキャベツ、名物のぬれ煎餅、そしてヤマサの醤油を使って焼きそばを作る!」
面白いかもしれない、と思って出したアイデアが思いがけず即採用となり、最初は驚いたという冨成さん。しかも、4ヶ月後に控えていたしょうゆ味わい体験館のリニューアルオープンに合わせて販売することが決まり、構想はあったものの全く詳細を決めていなかったため、当時は大慌てだったとか。


▲ぬれ煎餅焼きそばが販売されている売店

オープンに向けて、提供場所の確保、レシピの作成、機材の準備、店舗の運用マニュアルなど、ありとあらゆる準備に追われたそうです。

お客様の率直な意見を反映し、進化を続けるぬれ煎餅焼きそば

関係各部署の強力な支援もあり、無事に2016年のGWに販売が開始されたぬれ煎餅焼きそば。順調に売れていたのかと思いきや、現実は意外にも厳しいものだったそうです。
「最初の頃は、『いまいちだね』『これ高いね』と言われることも多かったです。結構いろいろなことを言われましたね。」と冨成さん。しかし、それこそが冨成さんの望んでいたことでもあったようです。

「焼きそばを食べてもらう、美味しいと思ってもらう。どんな食材を使っているの?と興味を持ってもらう。そこではじめて、銚子のキャベツやぬれ煎餅、そしてヤマサ醤油、それぞれの美味しさ、良さがお客様に伝わる。」「”美味しいもの=お客様が求めるもの”です。とってもシンプル。」
そう言い切る冨成さんは、お金を払うからこそ出てくるお客様の本音と直接向き合い、ぬれ煎餅焼きそばのブラッシュアップはもちろん、他商品の開発にも消費者の生の声を生かしていると言います。

また、焼きそばづくりのプロに指導を仰ぎ、「焼きそばづくりのイロハをしっかりと学ぶことができました」と技術にも自信をのぞかせます。鉄板で作る焼きそばは家庭でフライパンで作るのとは違い、プロならではのコツもたくさんあるそうです。

「シンプルであるがゆえに、ちゃんとコツを押さえないと美味しく焼けない」と言う冨成さんは、もはや醤油を開発する人間ではなく、まるで焼きそばのプロのよう。
ストイックに向き合ってきた冨成さんが作るぬれ煎餅焼きそばを、ヤマサ醤油の工場見学とともにぜひ楽しんでみてください。

(聞き手・佐野明子 / 文・江戸しおり)

続く→ 350年以上の伝統を守るために新しい風を起こす!ヤマサ醤油・冨成浩静さんに迫る

ヤマサ醤油株式会社本社
〒288-0056 千葉県銚子市新生町2-10-1
工場見学センター TEL:0479-22-9809(8:30~16:50 年末年始を除く)
本社庶務課 TEL:0479-22-0095(8:30~16:50 土日祝・お盆・年末年始除く)
https://www.yamasa.com/
※ぬれ煎餅焼きそばの販売時間は11:30~14:30です。臨時休業の場合もあるので、事前に電話でご確認ください。

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